著者は、ファッション誌やテレビでも活躍する人気スタイリストの小山田早織さん。自宅の外に部屋を借りるほどの衣裳もちだったそうだが、出産を機に段ボール100箱分の服を断捨離。自分にとって本当に大切なものを見極め、「稼働率100パーセントの循環型クローゼット」を完成させる。その結果、過去最高の自己肯定感が手に入ったという。
この手の片付け本は読んで終わりがほとんど。あまり期待せずページを開いたが、著者が服を整理するに至った経緯とその結果生じた変化を知り、なぜだか「私もやってみよう」という気になった。そして年末年始、今の家に越してから10年ぶりの大整理を断行。クローゼットが見違えるほどすっきりした。でもそれ以上に嬉しかったのが、片付けを進める中でさまざまな気づきを得られたことだ。
流れを簡単に説明すると、まず、すべての服をクローゼットからひっぱり出す。次にざっくりと色で分け、各色の服の山をシャツやパンツなどのアイテムごとに分類。そして、「白のTシャツ類」というように分類された各色の各アイテムを、「必要十分な点数」の「好きなもの」に絞り込んでいく。
この作業がとてもよかった。「自分にはいくつあれば足りるのか」と考えるよい機会になった。また、自分がどれだけ「妥協」と「無駄」に囲まれていたかも痛感。もはやビミョウな手持ちの服(妥協)をまとい続けていた自分も、出番がないままクローゼットのスペースを無駄にとっていた服も、哀れな気がした。
「好きなもの探し」はこんまりさんと似ているが、私は過去に「ときめき片付け」に失敗している。今回成功したのは、著者がスタイリストだったからかもしれない。数々の女性誌で着回しコーデを提案してきた名スタイリストの「服は10着あれば十分」という言葉には説得力があった。またプロセスも合理的で、自分に合っていたのだと思う。
思い切って手放すことにした服は、古着屋への買取依頼やクリーニング店での古着引き取りサービス、市の古布回収を利用し、最大限リユース、リサイクル。下着や靴下はウエスとして、油拭きや掃除に使っている。
片付いたクローゼットを眺めながら、心に誓った。今後新しいものを買うときはけっして適当に選ばず、妥協しないこと。一つひとつの選択を、もっと慎重に丁寧にすること。そして自分を明るい気持ちにしてくれる服を大切に、長く愛用すること! それが自分を大切にする、自己を肯定するということなんじゃないかと、クローゼットの整理を通して確かに実感した。
書名 | “着ない服”がゼロになる! 稼働率100%クローゼットの作り方 |
著者 | 小山田 早織 |
出版社 | 講談社 |
出版年月 | 2021年10月 |
ページ数 | 96ページ |
著者:小山田 早織(オヤマダ サオリ)
1987年埼玉県所沢市生まれ。「with」「VERY」などのファッション誌や広告、ショーのスタイリングを手がける。ベーシックでありながらトレンド感漂う大人なコーディネートが代名詞。日本テレビ「ヒルナンデス!」で人気を博し、花王「エマール」のCM出演も話題に。プライベートでは二児の母。(「出版書誌データベース(Books)」より)