『ひかりのあめふるしま 屋久島』へ

評論・エッセイ・詩

4月に結婚20周年を迎える。私の仕事の契約が3月で一区切りつくこともあり、次の職場に移る前のこのタイミングで、どこかへ行こうという話になった。屋久島に行きたい私と、奄美大島に行きたい夫。この際だから両方行こう!と、それぞれの島に3泊4日、計6泊7日の旅行を計画した。

屋久島にはずっと憧れがあったのだけど、正直知っていたのは「縄文杉」くらい。写真を見ると楽しみが半減してしまう気がして、ガイドブックはなるべく見ないようにしていた。テキストで屋久島のことをもっと知りたいと思い見つけたのが、この本だった。

その沢を渡ると、いきなり苔の世界になった。すごい。沢の湿気を吸って、苔はありとあらゆるものを覆い尽くしてる。清冽な緑。こんなに深いのに、透明感のある緑。みずみずしくて、生れたばかりの緑色、それが世界を満たしてる

生気が樹から沸き立っているみたいだった。強烈な生命力。このまっすぐさは何なんだろう。天の意志、地の意志。元気を分けてもらいたくて、目をつぶって木の幹に触れた。ひんやりした苔の感触。潤い。指先から森の命が染み込んでくるみたい

読んで大正解だった。屋久島の森に包まれたい、思いっきり深呼吸したい、人間が数十回生まれ変われるくらいの時間を生きてきた大樹に触れて、自分が何を感じるのかを確かめたい、と心が沸き立った。

ただ読めば読むほど、う~んと頭を悩ませてしまった。「屋久島といえば縄文杉」だと思っていたのに、縄文杉に対する島の人の反応がイマイチなのだ。

ランディさんがお世話になったエコツアーYNACのガイド・オウ氏は、「あそこに行っても縄文杉以外に何もありませんよ」と言う。白谷雲水峡の山小屋のおじさんも、「みんな、荒川林道(注:縄文杉トレッキングのルート)に行っちまうからな。あっちは何もないのに」と言う。

調べてみると、YNAC (今もエコツアーを提供している)では確かに縄文杉トレッキングのガイドをやっていない。代わりに、「2日間でじっくり楽しみたければ、最強の組み合わせは、ヤクスギランドと西部照葉樹林!」と書いてある。そしてオウ氏がご神託のような威厳でもってランディさんに放ったというこの言葉――「白谷雲水峡に行きなさい」。

島の自然を知り尽くした人の言葉は重みが違う。行程22キロ、往復10時間の本格登山(=縄文杉トレッキング)で疲れ切って、他に何も見られなかったら残念すぎる。初めての屋久島。原始の森に浸りたい。行くべきは、縄文杉か、白谷雲水峡か、ヤクスギランドか、西部林道か…

悩みに悩んだ末にたどりついたのは、「一度の旅で屋久島を味わい尽くすのは無理」という当たり前の結論。なんといっても、世界自然遺産の島なのだ。

夫と相談し、今回は結局、縄文杉と白谷雲水峡・太鼓岩の王道ルートを行くことにした。絶対にまた行く。次回はヤクスギランド・太忠岳と西部林道に!と、今から決意してしまうほど、本書を読んで屋久島の魅力にとりつかれた。

次はランディさんのように一人旅で♪

書名ひかりのあめふるしま 屋久島
著者田口 ランディ
出版社幻冬舎
出版年月2001年8月
ページ数267ページ