とにかく英語が話せない、聞き取れない、そしてコンピューターが全く使えない、無力とはこのことか、を思い知る毎日です。新しいことを始めると必ずトラブルが起きます。でも、誰かが助けてくれたり、なんかうまいことぬるっと生き抜いています。やっぱ新しい世界を知ることは興奮する。心も体も少し強くなってきた気がします。(「はじめに」より)
なんだろう… 読み終えて、なんだかホロ苦い感じ。でも心の中に、「勇気」のひと雫がぽとんと落とされた感じ。光浦さんの挑戦が、人生にもやもやしているアラフィフの背中を「なんとかなるよ~」と笑って押してくれる感じ。
「生き馬の目を抜く芸能界」から「簡単に言えば…一旦逃げます」と言って、カナダに渡った光浦さん。右も左もわからず、言葉もわからず、友人もいないバンクーバーへひとり旅立ち、そこでたくさんの失敗、恥ずかしい思い、悔しい思いをして。それでも、そんな全部を包み込んでハッピーな気持ちにさせてくれる、素敵な人々との出会いに恵まれて。
私も27歳のときに、仕事を辞めて人生やり直すつもりで留学した経験がある。授業のわからなさに絶望し、事務室に駆け込んでスタッフに泣きつき、入学を延期して語学学校から出直した経験まで、光浦さんと一緒。だから、手続きひとつに悩んで泣く光浦さんの気持ちは痛いほどわかる。ましてやそれが、50を過ぎてからの一大チャレンジだとしたらーー。
一難去ってまた一難の毎日にもめげず、カナダの生活に溶け込んでいる光浦さんはすごい。2年間の本気のカレッジにえいやで入学してしまうところは、もっとすごい。でも光浦さんが本当にすごい、そして素敵だなと思うのは、ありのままの感情を包み隠さず書いているところ。緊張も、不安も、動揺も、全部。
留学に旅立つまでの日々をつづった前作『50歳になりまして』を読んで、わたしの生活にも少なからず変化があった。「喫茶店で働きたい」という長年の願いを叶えてみようと、カフェの求人に応募したり(結局、返信すらもらえなかったけれど…)、「きれいな家に住みたい」という願いを叶えようと(というか、いいかげん理想にちょっとでも近づけようと)、重い腰を上げて収納を片付けたりした。
『ようやくカナダに行きまして』を読み終えたいま、光浦さんの「カレッジ入学」みたいに大きな冒険に出ようとは思わないけれど、光浦さんの「日々の暮らし」みたいに小さな挑戦はもっともっとしたいと思う。(こうかもしれないな)と空想ばかりしていないで、「こうなりました~」を増やしたい。
新しいことに挑戦してオロオロしたりテンパったりしたときは、(今日もがんばってるかな…?)と光浦さんを思い出すことにしよう(←光浦さん、すいません笑)。そして、Keep moving。50代に悔いを残さないように。
書名 | ようやくカナダに行きまして |
著者 | 光浦 靖子 |
出版社 | 文藝春秋 |
出版年月 | 2024年9月 |
ページ数 | 240ページ |
⇒留学前の生活をつづった本の感想はこちら「私も『50歳になりまして』…」